『ここは退屈迎えに来て』 山内マリコ
前に単行本を友人に借りて読んでいて、今回は文庫版での再読。
初回よりも、椎名の存在がくっきり見えた気がする。
わたしも生まれた土地の文化レベルの低さ等々が嫌で、県外の大学を受けた身の上なので、この小説に描かれている女の子たちの気持ちはちょっと分かる。
今は実家のあたりよりは若干都会に住んでいるけど、車ないと(精神的な意味でも)生きていけないし、ときどき東京の空気を吸いたいし。
でも、あれだな、子どものころに感じていた重苦しい閉塞感は、今はもう感じない。
子どものころの息苦しさは、親に金銭的な意味で依存せざるを得ないところとか、車運転できないから親に乗せてもらうしかないところとか、そういう部分からも来ている気がする。
誰かの顔色をうかがいながら生きていくのは、みじめだ。
そんなわたしも、今では、ひとりでファミレスも、ひとりでカラオケも、ひとりで焼肉も、ひとりで東京も、ひとりで外国も、自由に行ける大人になった。
車は去年買った、去年発売されたばかりの新車だし、ぐんぐん、どこまでだって行ける。
子どものころは大人になんかなりたくない、って思ってたけど、大人になったわたしは頼まれたって二度と子どもなんかやりたくない、って思ってる。
今がいちばん自由で、幸福だ。
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そばにいても離れていても、私の心はいつも君を呼んでいる―。都会からUターンした30歳、結婚相談所に駆け込む親友同士、売れ残りの男子としぶしぶ寝る23歳、処女喪失に奔走する女子高生…ありふれた地方都市で、どこまでも続く日常を生きる8人の女の子。居場所を求める繊細な心模様を、クールな筆致で鮮やかに描いた心潤う連作小説。