夕と闇

本と旅と日々の暮らし。あわいに消えていくものたちの記憶。しんしんと降り積もる。

小説

『火星の話』 小嶋陽太郎

良かった。 デビュー二作目らしい。 一作目は本屋で見かけてもスルーだったんだけど、買って読まないとだなー。 ラストも、たぶんこのお話にとって最適に近いかたちで終わらせていて、そこも良かった。 ***************************************************…

『コントロールゲーム』 郷里悟

幻冬舎のキャラクターノベル、という位置づけらしい。 ライトノベル(硬め)って思っておけば良いかも。萌えを前面に押し出したりはしていない。 タイトルと、あらすじが、中身と合ってない。 天才と称される人がいっぱい出てくるけど、そんなに天才っぽくな…

『忘却のレーテ』 法条遥

突っ込み始めるといろいろあるけど、でも面白かった。 閉鎖空間で毎日記憶をリセットされる。 主人公はその実験に参加する前からすでに精神にある歪みを抱えていて、その主人公の視点で話が進むので(形式的には三人称だけど)、読み手も結構調子狂わされる…

『コロシアム』 土橋真二郎

土橋真二郎、好きなんだー。 お店で新刊を見かけたら、無条件で買ってしまう作家さんの一人。 デビュー作の『扉の外』から追いかけています。まあ、ところどころ、取りこぼしてるけど(笑) そして今回のやつは、イラストが白身魚さんで、かわいすぎるのであ…

『何者』 朝井リョウ

『何者』、読んでみたー。 読み終わった後、最初の感想は、「ずるい」だった。 この終わり方は、ちょっとずるい。 最後に観察者たる語り手を否定することで、どんでん返し的な流れを作っているんだけど、それがちょっと鼻につく。 「語り手に共感して読んで…

『もういちど生まれる』 朝井リョウ

短編連作。 わたしにとって、初めての朝井リョウ。 最初のお話を読んで、なんか自意識が気持ち悪いなー、と思った。 でも、だんだん気にならなくなった。 チューニングされたのか、なんなのか。 周りの似たような他者の存在によって、初めて形づくられるアイ…

『ランチのアッコちゃん』 柚木麻子

連作短編集。 表題作は、そこそこ面白かった。 けどなー。 特に最後の話とか、いま流行りの小説仕立てのビジネス書みたいな感じ。それか、自己啓発本。 作為的だし、押しつけがましい。 普通の小説がスローフードだとすると、これは確かにビタミン小説、ある…

『ここは退屈迎えに来て』 山内マリコ

前に単行本を友人に借りて読んでいて、今回は文庫版での再読。 初回よりも、椎名の存在がくっきり見えた気がする。 わたしも生まれた土地の文化レベルの低さ等々が嫌で、県外の大学を受けた身の上なので、この小説に描かれている女の子たちの気持ちはちょっ…

『半導体探偵マキナの未定義な冒険』 森川智喜

探偵ロボットが、エラーを起こした探偵ロボットを見つけ出し確保する話。 面白かったけど、面白かった止まりかなー。 特に感情が揺れたりはしなかった。 ************************************************************* 半導体探偵マキナの未定義な冒険 作…

『舟を編む』 三浦しをん

文庫落ちしていたので、読んでみた。 映画にもなりましたね。 売れてそうだからどうかなー、と思ったけど、普通に面白かったです。 プロジェクトXとか(あんまり見たことないから良く分かんないけど)、歴史ものみたいな感じの時間スケールで、いろいろ省略…

『テキスト9』 小野寺整

毎回毎回「面白かった」で申し訳ないけど、この本もかなり面白かった。 というか、この年になると、そんなにハズレ本引かないよねえ…。 というか、つまらない本最後まで頑張って読まないよねえ…。時間もったいないし。 説明するのが難しい。 途中、闇鍋みた…

『ニルヤの島』 柴田勝家

面白かった! けど、ちゃんと理解できているかというと、心許ない。 特に奇抜なキャラクターがいるわけではないけれど、どのキャラクターも親しみやすい。 章が変わるたびに語り手がころころ変わる構成で、わたしにはそれが読みやすかった。飽きずに読める、…

『ホーンテッド・キャンパス なくせない鍵』 櫛木理宇

もう7巻なんだねー。 この人、他のシリーズも出してるし、かなりのハイペースだな。 学生運動とか、あさま山荘事件とか、そのあたりの話が興味深かった。 当時の状況ぜんぜん知らなかったから。高野悦子の『二十歳の原点』はいちおう読んでたけれども。 日…

『その女アレックス』 ピエール・ルメートル 橘明美訳

描写は結構えぐいけれど、話の展開が気になって、ぐいぐいと引き込まれる。 最後はアレックスに感情移入してしまって、もう…。 なんか、何書いてもネタバレになりそうなので、実際に本屋さんで手に取って最初のほうを立ち読みしてみれば良いんじゃないかな?…

『ザ・サークル』 デイヴエガーズ 吉田恭子訳

世界最高のインターネット・カンパニー、サークル。広くて明るいキャンパス、一流のシェフを揃えた無料のカフェテリア、熱意ある社員たちが生み出す新技術――そこにないものはない。どんなことも可能だ。故郷での退屈な仕事を辞めてサークルに転職した24歳の…