『忘却のレーテ』 法条遥
突っ込み始めるといろいろあるけど、でも面白かった。
閉鎖空間で毎日記憶をリセットされる。
主人公はその実験に参加する前からすでに精神にある歪みを抱えていて、その主人公の視点で話が進むので(形式的には三人称だけど)、読み手も結構調子狂わされる感じ。
毎朝ゼロスタートで、でも前日となんか矛盾していて、主人公は前日の記憶がないけど違和感を覚え、読者のわたしは「あれ?」と思いつつとりあえず読み進めるんだけど、だんだん混乱してくる。
侵食される感じが、ちょっと気持ちわるい。
法条遥は『リライト』『リビジョン』を読んでいて、『リビジョン』がちょっとひどかったので避けていたんだけど、今回作者を見ずに買ってしまったという経緯。
この『忘却のレーテ』はわたし的にはマルの範囲だったので、結果的には良かったかな。
昔はもう少し潔癖だったけど、最近は少しでも面白いところがあるならその本は成功しているんじゃないか、みたいな考え方に変わってきた。
作品単体としての完成度よりも、わたしにどんな影響を与えてくれるのか、っていうところのほうが重要なんじゃないかと。。
その意味で、この作品は成功しているし(少なくともわたしにとっては)、これだったら他の作品に手を伸ばしても良いかなーと思える。
まぁ、『リライト』『リビジョン』に続く四部作の残りは、やっぱり避けるけどねー。
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両親を事故で亡くした女子大生・笹川唯は高額の報酬と引き換えに記憶消去薬「レーテ」の新薬実験に参加する。完全に閉鎖された施設で、天才科学者の監視のもと過ごす7日間。毎日記憶をリセットされる唯と5人の被験者たちだが、ある日目覚めると流血死体を発見して――。どうしてこの手は血塗れなの……まさか私が、殺したの? 驚愕のエンディングに戦慄必至の記憶喪失ミステリ。