『ザ・サークル』 デイヴエガーズ 吉田恭子訳
世界最高のインターネット・カンパニー、サークル。広くて明るいキャンパス、一流のシェフを揃えた無料のカフェテリア、熱意ある社員たちが生み出す新技術――そこにないものはない。どんなことも可能だ。
故郷での退屈な仕事を辞めてサークルに転職した24歳のメイは、才気あふれる同僚たちに囲まれて幸せな会社生活を送りはじめる。しかし、サークルで推奨されるSNSでの活発な交流は、次第にメイの重荷になっていき……
人間とインターネットの未来を予見して世界を戦慄させた、笑いと恐ろしさに満ちた傑作小説。
以上、Amazonより。
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すごく面白かった。
SNSとか、人とのつながりとか、依存症とかに興味があって、最近その手の新書系の本を読んでるんだけど、この本はそういったものに対する人間の性を、小説という手法で見事に描き表わしている感じ。
SFなんだけど、今現在わたしたちが立っているこの場所から、地続きのちょっと先の未来を描いていて、読んでいると、どこまでが今で、どこからが未来なのか、だんだん分からなくなっていく。
というか、未来はこういうふうにモザイク状にやってくるんだよね、ってことを改めて認識したよ。
「ひとり」を知らない人間特有の不安定さ、人の善意や無垢な願いがディストピア的な未来を引き寄せるその過程、最先端に立っていると自負する(意識の高い)人たちのポジティブ側に傾いた思考の危うさ……。
そういう、細部の描き込みが素晴らしいと思う。
この結末は、思い通りにならない感情や選択、意図せず自分の人生に触れてしまったときのざらざらした手触り、灰色の荒野、そういった生の感触を手放したいと思っている多くの人たちにとって、ハッピーエンドなんだろうな、と思う。
だって、どんなときだって、みんなが見守ってくれているんだもの。
人類が人類の殻のなかに閉じこもって見る、夢。集団幻想。
外の視点を失った意識は、やがて緩慢な死を迎える。(ハーモニー的な?)
でも、やっぱり、ひとりは寂しいよ。
ねえ、そう思うでしょう?